―「人間らしい生活」とは何か―

過労死等防止対策推進兵庫センター代表幹事

兵庫過労ストレス研究会 弁護士藤原精吾

 

 過労死110番に「息子が,夫が、働きづめで過労死しそう、何とかしたいのです。」という電話がかかってきます。周りが心配でも、ご本人は、この仕事で成果をあげて,家族のために、と思ってがんばっています。そして夜が明けたら布団のなかで冷たくなっていることもありました。「あした来る別れが見えない」のです。

過労死防止には法律で残業時間の上限を規制すること、年休が100パーセントとれること、企業がそれを守ることが必要です。過労死等防止対策推進法はそれに向けてのほんの第一歩にすぎません。第二歩、第三歩に踏みださせるのは、働く人びととその家族の声です。

 過労死・自死で最愛の夫、息子、娘を亡くした家族が、その痛切な想いを過労死の予防に取り組ませています。今までそれが起こっていない家族でも、いつ起こるかも知れないことです。

 「過労死防止」には、働き方が人間の体にどんな影響をもたらすのか、知ることから始まります。不幸にも過労死された方の実例を知ることは多くのことを教えます。そしてそのような働き方をさせているのは、直接的には雇い主ですが、それを当たり前と考えているのは雇い主だけに限りません。あなた自身が、「仕事第一」、「お金第一」、「男は!仕事、女は家庭!」という考えに取りつかれているのではないでしょうか。

 ディーセントワーク、ワークライフバランスという言葉をご存じですか。人の生活は仕事だけでは成り立ちません。家族とともに、自分の人生を生きる、「人間らしい生活」とは何かをもう一度考えて見ませんか。フランスやドイツ、イタリア、オランダ人などの生活を見てみましょう。私たちとはだいぶ違うようです。まじめに働くのは素晴らしいことですが、人間生活はそれだけではない、ということを社会常識にしましょう。

 法律を変え、企業の意識を変えるのは、その社会常識がどれだけ多くの人に共有されているかに係っています。

兵庫過労死防止センターはそのために働きます。もちろん相談にも応じます。

(2015.11.6)


―ホームページ開設にあたって―

過労死等防止対策推進兵庫センター共同代表

(兵庫過労死を考える家族の会代表)

西垣 迪世

 

 2014年11月12日過労死防止の地方の拠点として、全国に先駆けての兵庫センター設立後1年が経過し、この度、ホームページが立ち上がることになりました。

2014年6月20日過労死等防止対策推進法が、全会派の国会議員のご賛同の下、労働法で初めての議員立法として成立しました。

この法律は、かけがえのない大切な家族を過労死で亡くした遺族の、これ以上過労死を出さないでとの切実な願いを、弁護士はじめ多くの方々がご支援くださって実現したものです。

私達、兵庫労災を考える家族の会は、2002年4月、過労死遺族同士の心の支え合いと、せめてもの労働災害・公務災害認定、企業補償への支援を目的に設立されました。

2012年5月設立された過労死防止基本法制定兵庫実行委員会においては、中心的に活動し、兵庫から全国へ過労死防止法成立のうねりを起こしていきました。

 

 さらに、過労死防止法成立後は、弁護士やご支援くださる方々とともに、過労死等防止対策推進兵庫センターを設立しました。この兵庫において過労死防止のための啓発・相談活動に取り組みたいと考えています。

 弁護士・遺族中心に、高校大学・労働現場・企業等において過労死防止の啓発を行います。過労死の実態や身を守る法律を知ることが予防につながると考えます。ご希望があればご連絡くださいませ。

 また、私達の家族が過労死ではないかと思った時、過重労働やパワーハラスメントで悩んだ時、相談できる所がなく途方にくれてしまいました。

私たちの経験を生かして、そのような方々のためのご相談先になれればと考えています。救える命を救いたいと思います。過労死遺族の相談に乗りたいと思います。どうぞご遠慮なくご連絡くださいませ。

 

 私は、27歳の一人息子を過労死で失いました。息子の無念を思います。 

真面目に働く人々が、過労やパワーハラスメントで命を失ったり、病気になったりすることはあってはなりません。

人は生きるために働くのであって、働くために生きるのではないのです。

過労死や過労疾病は、本人のみならず、家族の未来をも失います。ひいては、企業や日本社会の未来まで失うことになります。

過労死防止法に魂を入れ、大綱に基づく具体策の実行を進めましょう!

兵庫の過労死防止活動をお手伝いくださる方々、どうぞ、過労死防止兵庫センターにご加入くださいませ。

ご加入されて財政的にもご支援くださいませ。

この兵庫から、過労死ゼロを実現するためにともに活動してまいりましょう!   

(2015.11.1)

 


―過労死等防止対策推進法を画餅に帰すのか、過労死を無くすための結節点にするのか―

過労死等防止対策推進兵庫センター副代表幹事

兵庫過労ストレス研究会 弁護士渡部吉泰 

 

 1991年に出版された全国過労死を考える家族会の会員の方々の手記が掲載された「日本は幸せか」(教育史出版界)のプロローグの文章の冒頭に「亡くなったその日から私たち残された家族は、毎日問い続けています。なぜ、死ぬまではたらかなくてはならなかったのか。なぜ未然に防ぐことができなかったのか。なぜ仕事のために倒れたという現実を、企業も行政も認めてはくれないのか・・と」とあります。この問いから四半世紀が経過した今でも、この問がいまだに有効性を持っていることに愕然となるのは私だけでしょうか。

 1970年代のオイルショックにより高度経済成長が終わった後、企業が経費削減のための人員整理を行った結果、残った社員が長時間過密労働に追い込まれたことによって、過労死(カローシ)という社会現象が生じました。併せて、企業が、効率的経営を目指して終身雇用制、年功序列等のシステムを廃止して、成果主義等のシステムを採用したことによって、労働者間の競争が加速するという状況が生じ過労死はさらに広がりを見せ、過労自殺という精神障害に起因する労働災害が生み出されていくとともに、若年、女性労働者に過労死が広がりを見せ、問題は深刻化しています。

 平成26年11月1日から施行された過労死等防止対策推進法は、全国過労死を考える家族会等を中心とした全国的な市民運動が原動力となって制定されました。四半世紀前の悲壮な問いを引き継いだ人たちが、この法律制定の中心となったことは、決して偶然ではなく必然だったのでした。

 この法律を画餅に帰すのか、過労死を無くすための結節点にするかは、これからの私たち国民一人一人の自覚と取り組みによります。今こそ私たち大人は、カローシを生み出す社会という汚名を返上するために取組みを始め、将来の日本社会を担う子どもたちのために、労働が人の幸せに繋がる社会を用意しなければならないと思います。

(2015.11.6)