過労死防止兵庫センター 設立宣言


1 2014年11月1日,過労死等防止対策推進法(過労死防止法)が施行されました。

  厚労省はすでに「過労死等防止対策推進室」を設置し,「長時間労働削減推進本部」も置いています。今月は過労死等の労災請求がなされた事業場などを対象に重点監督を実施されていますし,既に過労死に関する電話法律相談も全国で実施されて成果をあげています。さらに,11月14日には,初めて政府主催で「過労死啓発シンポジウム」が,過労死防止全国センターが協力するかたちで開催されます。

2 「過労死」が日本の深刻な社会問題として広く知られるようになったのは,過労死110番全国ネットワークが開設された1988年からでした。それ以降,過労死はなくなるどころか,1990年代後半からは過労やパワハラなどによって精神障害を発症し自殺する過労自殺(自死)も増え始め,過労死・過労自殺は職種・性別・年齢を超えて広がり,働きすぎによる健康障害はいっそう深刻化しています。

3 このような状況に危機感を持った全国過労死を考える家族の会と過労死弁護団全国連絡会議の呼びかけで,2011年11月18日「過労死防止基本法制定実行委員会」が結成され,55万筆を超える署名活動や,全国121の地方議会における法制定を求める意見書採択,熱心なマスコミ報道,超党派議員連盟による後押しなどにより,ついに法制定に至ったのです。

 ここに,私たちは,過労死防止法の制定にご尽力くださったすべての方々に,心よりお礼申し上げます。

4 過労死防止法は,過労死防止対策の効果的な推進を国と地方公共団体の責務とし,過労死に関する調査研究,国民に対する啓発,相談体制の充実,民間団体の支援の「4つの過労死防止対策」を行い,「過労死防止対策大綱」を作り,その推進状況を毎年「過労死白書」を発行して国会に報告し,必要と認めるときは法制上・財政上の措置を講ずることなどを定めています。

 この法律は画期的なものですが,これ自体は過労死防止の理念と基本的な施策及びその推進体制を定めたにすぎません。この法律に「魂」を入れ,国民の意識改革と具体的な制度改革につなげていくため,幅広い民間団体や専門家が力をあわせ,国や地方自治体と連携する必要があります。

5 そこで,私たちは,これらの民間団体や専門家の協力共同と,国・地方自治体との連携の要となるものとして,ここに「過労死等防止対策推進兵庫センター」(略称・過労死防止兵庫センター)を設立します。

 本センターは,過労死遺族の団体である兵庫労災を考える家族の会(ひだまり)や労働問題に関わる弁護士が参加する兵庫・過労ストレス研究会などの兵庫県内の団体を中心に,全国の過労死遺族,過労死弁護団,過労死防止全国センター,来年6月結成予定の過労死防止学会などと連携し,また過労死防止を願うすべての労働組合・労働団体,市民団体,さらには経済団体などにも広く共同をよびかけて,国・地方自治体が行う過労死に関する調査研究の促進,啓発活動,相談活動,地方自治体の施策に対する支援や提案,現行法の遵守と過労死防止に必要な法制上の措置についての立法提案などを積極的に行っていきます。

6 私たちは,「過労死等がなく,仕事と生活を調和させ,健康で充実して働き続けることのできる社会」の実現のために,私たちのこのような活動に,立場を超えて多くの人びとが賛同し,参加し,連携し,共同して下さることを,心から呼びかけます。

 以上,宣言します。

               2014年11月12日

                  過労死等防止対策推進兵庫センター 設立総会